引き続きFIAジャパンの茂木副理事長にお話を伺います。今回はFIAジャパン様から見た日本の商品先物市場や日本の商品設計など、深く突っ込んで詳細にお話を伺っています。非常に興味深いお話であり、同時に非常に勉強になるお話です。ご期待下さい。
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| オーテック |
―ずばりお聞きします。FIAジャパン様は、日本の商品先物取引業をどのように見ておられるのでしょうか。 |
| 茂木様 |
日本の商品先物市場は世界で最も恵まれた市場で、成長性にブレーキをかけている要因は長年の国内市場先物市場業務環境の中で育った文化、習慣、規制環境及び離島市場運営感覚にあると考えます。日本の市場は欧米の間にあり立地条件は素晴らしいし、市場背景には中国の商品需要をベースにした世界市場を牽引するアジア需要があり、アジアの指標価格形成のリーダーになり得る環境を供えもっています。中国先物市場の出来高は日本を大幅に上回っていますが、国際的な市場価格依存度は断然日本が上です。
先日発表されたIMFの日本経済の成長率はマイナス6%になっていましたが、実経済でいえばそこまで悪くないにも関わらず、過剰反応で家計の紐を硬くしているのが国内需要を停滞させているのと同様な市場参加者心理があるものと考えます。国民や市場関係者は日本が持っている実力を自らが消費する国際市況商品価格の決定に参加し得る、身近な市場設計が必要なのでしょう。
バブル後の日本は再生に苦しみましたが、その経験は必ず生きてきます。そのことを踏まえると、現在の世界的な経済波乱の真っ只中において、日本がアジアの中核市場として再生していくには素晴らしいチャンスであり、かつ最後のチャンスであると考えます。何故かといえば、このチャンスを逃すと中国が台頭してくるからです。
今、アジアの産業インフラとして、日本の商品先物市場が中核となって機能するように考えていかなければならない時期ですね。そのためには、商品設計や商品先物市場を国内のものとして考えるのではなく、アジアの中核となる商品先物市場として考えなければならないでしょうね。簡単に言えば、脱日本ということですよ。日本の商品先物取引業者に対する期待は大きいですし、その期待に応えなければなりません。 |
| オーテック |
―商品取引所の上場商品設計や売買仕法、システム化についてもまだまだ改善余地があるとお考えのようですが如何でしょうか。 |
| 茂木様 |
市場設計を考えるときに先ずは「基本に戻れ」と言いたいです。商品先物市場は世界中どこに行っても「公正な価格形成」を求める場です。また、市場流動性と透明性を確保することが取引所の責務です。取引所の方が弊社(ニュー・エッジ・ジャパン)にお見えになり、「御社が売買しないから流動性が低い」と言われますが、これは大きな間違いです。市場流動性を作るのが本当の取引所の役目であり、取引所経営者の責任なのです。言葉を変えると、流動性のない先物市場を作るということは、正に欠陥商品を作ることに繋がります。アメリカ的な言い方をしますと、市場流動性を作れないのであれば取引所市場を閉めなさいということでしょうか・・・。
次に重要なことは取引の安全性の確保です。安全性とはあらゆる市場参加者が、理解・納得できる経済性と透明性あるクリアリング機能が必要ということです。世界のどの市場もよりベターなものを求めて、クリアリング機能を構築していますがベストと言う定義はありません。でも、よりベストに近づくように皆努力しています。昨年のリーマンの問題が起きた時に、市場の信用不安が起きましたね。そして、市場機能の重要性、清算機能の重要性が叫ばれましたが、これ程までに精算機能の重要性が高まったことは先物市場の歴史に無いことなのです。先物市場機能の重要性、清算決済機能の重要性が認識されていることも日本にとってはチャンスです。
しかしながら、市場の改善ということを考えますと、当然のことながらどの国においても変化や改革に対する抵抗が強いものです。日本の場合は、それが特に強いといいますか、保守的であることを感じます。それは取引所の中にも市場参加者にもあるかもしれません。ただ、変化・革命がなければ、日本市場を再生するチャンスは失われるでしょうね。ですから、関係者には目先の利益に捉われない勇気ある判断が求められます。あとは、合理性、利便性、経済性の追求です。日本の取引コストは自由化されましたがまだまだ高いと思っています。証拠金は取引リスクを担保するものであるにも関わらず、金利が付加されないばかりかリスク度に比例しない証拠金制度など合理性に欠けた負の遺産をまだ引き継いでいます。これには先物行政の多元化が影響しているのでしょう。グループ別の規制環境や、その下にある取引所、その下にあるクリアリングハウスというような構造が、日本の取引コスト高に繋がっていると思います。これ等の問題点の多くは一元行政化を持って一挙に解決が可能なものと考えます。わが国の先物市場を育成するには正に先物行政改革が不可欠ですね。 |
| オーテック |
―日本の商品市場設計についてのご意見をお聞かせ下さい。 |
| 茂木様 |
本来の先物市場設計は現物があって先物市場が存在すると考えなければなりません。先物市場は現物があって、1番限、2番限・・・が存在します。現物を1ヶ月保有してコストを含めて1番限の価格が決まります。つまり、先物市場設計の根幹は現物在庫の価格から始まります。そして、先限になればなるほど現物との価格連動性が薄れてきます。
ところが、日本は発想が違っていて現物市場を軽視した先物取引が行われています。ですから、日本で価格差を考える場合に、1番限を買って2番限を売る構図になってしまいます。ところが、欧米の場合は、この価格差だけのスプレッド市場が存在していますから、1番限を買って2番限を売る必要がないのです。これは商品間においても同じです。即ち、先物市場の適正な価格形成は格差(時間的・商品間等)市場を持って機能しているのです。
しかし、日本にはこの発想が少ないために市場設計上の間違いに繋がったのではないでしょうか。もう一つは、どの市場参加者に市場流動性を求めるのかの問題です。この市場流動性を大衆投機に求めたのが日本特有の商品市場設計です。ですから、できるだけ長く流動性を求めるために期先にポジションを求めるようになったと考えられます。期近の流動性がないのは大衆投機に依存する市場流動性にあって、取引所の人為的な判断である「期近限月に関わる制度」があるものだと私は思います。今回の東京工業品取引所の新システムは、私が言うスプレッド取引を可能にしたものだと思います。これで初めて時間差や商品間の格差を取引できる市場が誕生したといえるでしょう。今後の日本の商品先物市場に期待しています。 |